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和音のもつイメージとは

和音のもつイメージとは?(その2)

                                         by 竹内淳

<和音のイメージ化とは>

 和音(そしてその連続である和音進行)が、音楽に背景をもたらすものであることは誰でも知っている。背景を絵になぞらえるなら、和音は豊かな色彩感をもたらすもの、ということになろう。最も色彩豊かなのは転調や借用和音の多い音楽といえようか。でも転調などの無い、音階固有の和音(主調の和音)自体にも、各々に異なった「色彩」があるということを見逃してはならない。

 このように、音楽に感じられる色彩感を和音(または和音進行)の中にとらえることを、「和音のイメージ化」と呼ぶことにする。色彩といっても具体的な色や情景を意味するものではない。心でとらえた和音の印象に言葉を与えるための手段といえる。「自分の言葉にする」という意味で、和音のイメージ化は立派な分析である。

 

 あくまでも、「和音のイメージ化」という言葉は、これまでの和声に対する発想の転換という意味合いで使ってほしい。

 

<和音のイメージをとらえる>

 和音(または和音進行)をイメージ化する方法は、2つ考えられる。

A.和音の機能に即した形で、和音のイメージをふくらませる。

B.機能から離れて、和音の響き自体の持つイメージをとらえる。

 イメージ化の作業が実際のレベルで無意識に行われるようにするためには、和音進行に慣れる必要がある。1つの和音、または和音進行について、何かを感じるまでいつも立ち止まってみよう。

 

A.  和音の機能に即した形で、和音のイメージをふくらませる

 和音の機能が譜面上の分析にとどまってはならない。T , D , S といった機能は、多くの和音(進行)を3種のカデンツというカテゴリに分けることで合理化を図っているが、1つ1つの和音進行にしろ、そのまとまりであるカデンツの進行であるにしろ、全て異なったイメージを持っている。それを感じて初めて音楽をとらえたことになる。ここでは 4 点の例を出すにとどめ、改めて詳述する機会を持ちたい。

 

例1)    ドミナントの不安定性 → トニックの安定性への解決をイメージ化する場合を先に見たが、同じドミナントでも、フレーズ途中のものと終止部分(全終止、半終止他)にあるものとでは、感じ方が全く違う。終止部分のドミナントがその前にサブドミナントを伴っていれば、それをもドミナントが包み込む、巻き込むといったイメージが成り立つ。さらにドミナントに向かうバスラインが生じていれば、音楽に勢いが感じられるだろう。

 

例2) 同じトニックに進むといっても、 I VVI とでは、イメージが大きく異なる。後者では「まだ I に行っていない」こと、「まだ先が続く」ことによる期待感がイメージを伴って高まる。また、同じVI の和音でも、VVI の場合と I VI の場合とで和音の重さの印象が変わる。今述べた前者の「重さ」に対し、後者は単に I を続ける「代わりに置かれる」ことも多く、ちょっとした和音変化がほしい時のような「フットワークの軽さ」がある。

 

例3) サブドミナントが使われるか、使われるとしたらどのタイミングかによっても、イメージが全く変わる。サブドミナントは音楽に潤いを与える役割もあり、有無はイメージに直結する。今後、詳述予定。

 

例4) 和音がどういうタイミングで変わるか。和音交替のタイミングをみることは、和声(和音進行)の流れを探る上で必須である。いわゆる「和声リズム」を探ることも和声のイメージに直結する。これも今後詳しく述べる予定だ。

下の楽譜について答えなさい(なかなか難しそうです(笑))

問1<1><2>それぞれについて、冒頭4小節の和音の感じ方に、どのような違いがあるのか考えてみましょう。

  <1>が原曲。

 

問2<1>と<3>は後半4小節に違いがあります。どのような違いがあるのか、またその違いがなぜ生じたのか説          明しなさい。

   (クーラウ「ソナチネ」op.20-1 第1楽章冒頭。答えは次ページ)

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