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和音のもつイメージとは

和音のもつイメージとは?(その1)

                                         by 竹内淳

 音楽をとらえるためには、和音の性質や響きのもつ特徴を知り、それを根拠にイメージを拡げていく作業が不可欠です。

 

<和音を機能としてとらえる>

 調性音楽で、例えば属和音といったとき、

1)次にトニックに進む。

2)終止部分で使われれば、フレーズを区切るに当たっての特別な効果を生む。

3)トニックヘの進行にあたり、導音は主音へ、第7音は2度下行、など制約 

 が多い。導音も重ねてはダメ。

4)属七の和音にある三全音が「不安定な」こともあり、属和音自体「不安定 

な」感じが強い。(だから安定を目指してトニックに解決したくなる。)

 

といったようなことが浮かぶ。これらの項目は和声法や音楽理論ではおなじみだが、和音をまず機能中心にとらえることが第一にくるのではないか。それは何も間違っていないし、それがなければ、バロックからロマン派までの音楽を正確にとらえることは不可能である。

 では和音の機能をとらえた後、それをどのように演奏に反映させるのだろう?

 

<「機能」の演奏への反映>

 ここでも属和音を例にとってみよう。

 V (属和音)が I (主和音)に解決するということは、V に含まれる音としてのエネルギーが I に吸い込まれていくように感じること。これは V の和音が「動的である」と感じることが前提になっている。ポジティブに動きたがっているものを  I ヘの動きの中で鎮めようとする働き。これが V I の基本的な感じ方であろう。ということは V I を弾き分けるにあたっては、に強いエネルギーを感じていれば「心理的に」強く、I で「心理的に」少し引っ込むように感じることは、間違ってはいない。「心理的に」と言ったのは、実際の音量の強弱として常に「正確に」反映されるとは限らないからだ。バランス感覚が最も大事。竹内淳の…やわらか音楽分析

 

 

※演奏におけるバランス感覚の例

 上記のことはあくまで「原則」であって、実際の演奏で V をどう弾くかはあらゆる場合に異なってくる。だからバランス感覚という言葉を使った。

 

例1)曲の終了の全終止で V より I を思いきり弾ききる場合、上記の「原則」にあえて逆らうことで、曲を終わろう!という強い意志を表すことができる。先の「原則」すなわち無意識に起こるデクレシェンドへの「誘惑」を断ち切るためには、堂々、毅然とした態度こそが有効だということ。

和音のもつイメージ譜例1、2_edited.jpg

例2)ショパン バラード第1番の中間主題のクライマックス歌い出し(106小節〜)。ここは輝くようなドミナント和音に始まり、次の小節でトニックに解決。譜例 2 のxの音はトニック和音に収まる(弱める)弾き方も可能だが、それだと後が続かなくなる。何故なら次のフレーズ始まりで1オクターブ上に思い切りジャンプするので、x音にそのためのエネルギーを蓄えておきたいから。つまりxの音は、前のフレーズ終わりの音として弱めたい思いと、次のフレーズへ伸び上がりたい思いとに挟まれた音なのだ。その駆け引きにどのように折り合いをつけるか、それが「解釈」である。

和音のもつイメージ譜例1、2_edited.jpg

これらは一例だが、和音を機能でとらえて安心するのでなく、それを実際の演奏に反映させる必要があることは、分かっていただけただろうか。演奏に反映させるためには、和音(進行)を「イメージ化」する必要がある。(続く)

(無断転載厳禁。竹内淳Copyright © 2008 Jun Takeuchi)

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